免疫細胞療法の種類と違い

ANK療法

患者さんの血液延べ5~8リットル(5000~8000ml)を体外循環させ、リンパ球成分だけを分離採取し血液の残りの成分は体に戻します。
血液はほとんど減りませんので安心です。
血液中のリンパ球を全部取っても全身にいるリンパ球の1%未満に過ぎません。
リンパ球も「減る内に入らない」のでご心配はいりません。
NK細胞は増殖が遅い細胞ですので沢山とらないと戦力が揃わないのです。
これを京都の細胞培養センターへ人の手で運びます。
(ANK療法の培養ができるのは世界でも京都の一か所だけです)
原則3週間の培養後すぐに治療を始める、あるいは他の治療を優先させて凍結保管することも可能です。
1クールという単位で12回を原則週2回ずつ点滴します。
点滴の度に高熱など顕著な免疫副反応(副作用)があります。
点滴後すぐにPET画像を撮ると腫瘍に殺到するNK細胞集団が腫瘍以上に強く映ってしまう等、いくつか注意点があります。
培養細胞は凍結保管し任意のタイミングで融解・再培養され治療に使います。
そのため標準治療のスケジュールを変更することなく、ANK療法のスケジュールを自在に調整できます。

CTL療法

T細胞の大半はがん細胞を攻撃しません。
そこで患者さんの体内から取り出された生きた腫瘍細胞を標的にして実際に攻撃することを確認したCTL(T細胞の一種)だけを培養し増殖させます。
ANK療法を1クール以上受ける方に無償で提供されますが、いくつか条件が合わないと実施できません。

一般法

日本で行われている免疫細胞療法の大半が一般法です。
ほとんどが注射器で20mlの血液を採血し、原則2週間培養して体内に戻します。
大半がT細胞でNK細胞、NK-T細胞、ガンマ・デルタT細胞などが少数混ざっています。
そこでNK細胞療法と命名されていたり様々なブランド名で呼ばれていますが、内容物に大差はありません。
ANK療法やCTL療法あるいは樹状細胞療法以外は、ほぼ一般法です。
月に1回か2回のペースで、培養完了日丁度に来院し点滴するのが一般的です。
点滴後、微熱が出ることがありますがほとんど免疫反応がありません。
点滴後に様々な検査を受けても影響はありません。
がん細胞を攻撃する力はなく、若干のQOLの改善や延命などが治療の目的と考えられています。

樹状細胞療法

樹状細胞には細菌やウイルスを認識する専用センサーが10種類ほど備わっています。
これらを組み合わせるとほとんどの細菌やウイルスを検知できます。
樹状細胞は体内の感染症が発生しやすい場所に張り付いています(血液にはいません)。
感染症の発生を認知するとT細胞をはじめ他の感染症免疫を担当する細胞に出動を促すことを明らかにした研究者にノーベル賞が授与されました。
そこで、樹状細胞ががん細胞に対しても同様の機能を果たさないのか研究されています。
しかし、樹状細胞にはがん細胞に反応するセンサーは見つかっていません。
前述の標的がん細胞を攻撃するCTLを誘導する際に樹状細胞は必要ありません。

NK-T細胞療法、γδT細胞療法

NK-T細胞やγδT(ガンマー・デルタT)細胞はNK細胞とT細胞の性質の一部を持つ中間的な細胞です。
試験管の中で活性化した状態で実験すると様々な種類のがん細胞を攻撃します。
NK細胞が持つセンサー群の一部を備えているのです。
但し攻撃力はNK細胞に遠く及びません。
また、NK細胞のように先頭を切って腫瘍組織を攻撃し他の免疫細胞に動員を促す役割を負っているのではありません。
ある程度戦いが進行した後に集まってくる細胞なので、免疫抑制のブレーキをかけ終戦準備をしながら攻撃に参加するものです。
これは免疫刺激が暴走しないようにするためです。
そのため単独でこれらの免疫細胞を培養して投与しても、免疫抑制が強い患者さんの体内ではうまく機能しないと考えられます。
実際、点滴しても強い免疫刺激に伴う高熱などの現象はあまり見られません。