⑦ 分子標的薬との同時併用はよく行われます

分子標的薬は、がん細胞の性質によってはNK細胞との相乗作用が期待できるため、同時併用が好ましいと考えられます。
ちなみに、毒性の強い抗がん剤の代表格である化学療法剤(殺細胞性抗がん剤)は同時併用できません。前ページ⑥で説明した通り、先にリンパ球を採って培養し、抗がん剤を投与したあと、がん細胞が減ってからANK療法と分子標的薬を併用するのが理想的です。
前立腺がんや乳がんなどに使われるホルモン療法剤は免疫細胞にダメージを与えないため同時併用が推奨されます。
一方、免疫刺激系の物質や漢方は、免疫が強く抑えられたがん患者の体内では、あまり効果を発揮できません。免疫刺激系の薬の中には熱が出るものもありますが、熱が出るANK療法と一緒にはやらないほうがよいでしょう。また、漢方薬は意外と免疫を下げるものが多いので要注意です。ANK療法が終わったあと、回復した免疫を下げない、もしくは少し上げるという目的で、他の免疫刺激物質やごく特定の漢方などを使用することもあります。

※広義の分子標的薬は、抗体医薬品と狭義の分子標的薬を含んでいます。例えていうなら、がん細胞の増殖の「給油口にふたをする」という働きをするのが抗体医薬品。分子標的薬は、がん細胞の増殖の「エンジンにたがをはめる」というものです。どちらも増殖を止めることを目標にしているので、それ自身ではがん細胞を傷害することはできません。